<ボーイング>

787の開発進む

 

 シアトルの新聞が、ボーイング787の機首が完成し、花火や煙と共にロールアウトのセレモニーがおこなわれたと報じている。機首ができただけで式典がおこなわれるとは、余り聞いたことがないが、なにしろこの機首は全複合材製で、かつてない一体成形の最新技術によるものだからであろう。

 大きさは長さ7.3m、直径5.5mで、これだけ大きな部品を一体としてつくるのは過去に例がない。複合材なので重量はいちじるしく軽く、ほとんど整備の必要もなくなって、コストもかからないらしい。

 この部分には機首先端、コクピット、前方胴体が含まれる。前方の風防は、これまでの旅客機が片側3枚ずつであるのに対し、片側2枚ずつ。しかも777などにくらべて大きさ1.5倍で視界が広い。また747と同じく、窓は開かない。緊急時は頭上のハッチから脱出するとか。

 ボーイングの幹部は「これだけ大きな部分を複合材でつくるのは787が初めて。これまでの理想が現実になったわけで、わが社は航空界の先端を走っていることになる」と語った。なるほど、機首だけに間違いなく先頭をゆくことになるであろう。

 ところで787の受注状況はどこまできたか。ボーイング社は今、これまで発注意向を示したエアラインとの間で、懸命に正式契約を結ぶための交渉を進めている。意向表明だけでは将来、本当に買って貰えるかどうか分からないわけで、受注数として勘定の中に入れるわけにはゆかない。

 これまで、787はエアライン21社から合わせて256機の意向表明がなされた。そのうち確定注文となったのは143機。残り100機余りのうち、どこまで確定になるか。ボーイング社としては年内には相当数の契約調印が得られるとしている。

 これに他の機種も合わせると、今年は8月なかばまでに総受注数571機、純受注数549機を獲得した。この分では年末までにエアバスを上回る注文が得られる見こみ。同時に670機を受注した1996年以来の最高記録になるかもしれないという。 

 なお、787は2010年の引渡し分までが注文でいっぱいになった。近いうちに2011〜12年の分も売り切れになるだろう。ただし主導的な大手エアライン――たとえばシンガポール航空、カンタス航空、英国航空などからの注文を受けていないので、そのために何機分かの引渡し順位があけてある。2006年中に契約が得られれば、そこに入ってもらうという。

 ほかにリース会社との契約交渉も進んでいる。交渉相手の名前は明らかにされていないが、おそらくはインターナショナル・リース・ファイナンス社(ILFC)とみられ、1〜2ヵ月のうちに大量注文となる可能性が高い。

 787は2007年夏に初飛行。2008年なかばには全日空が量産1号機を受領する予定である。

(西川 渉、2005.8.29)

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