<ボーイング対エアバス>

受注合戦激化

 

 10月28日付けの「シアトル・タイムズ」紙によると、今年のボーイング対エアバスの受注合戦は、ボーイングに凱歌が上がるだろうという。965機対883機だそうである。両社合わせて1,848機になるが、これは例年の2倍以上に当たる。これまでの数年間、受注数は下図のとおり合わせて700機前後であった。


シアトル・タイムズ、2005.10.28 

 ボーイング社は昨年277機の注文を受けた。今年はその3.5倍に相当する受注数が見込まれる。最近までの受注数は649機で、年末には965機になるというのである。これはボーイング社の史上最大の受注数で、これまでの最高記録は1988年の877機であった。

 今年もあと2ヶ月を残すのみとなって、両社の受注競争はますます激しさを加えている。当面の勝負の舞台はカンタス航空、シンガポール航空、キャセイ・パシフィック航空、エミレーツ航空である。これらの競争にボーイングが勝てば、787の受注はさらに大きく伸び、747発達型の開発着手が決まり、新しい長距離型777の開発もはじまることになるらしい。

 747発達型に関しては、開発着手が未定であるにもかかわらず、ルクセンブルクのカーゴルクスが貨物型10機の予約をしており、カンタス航空も旅客型の発注を考えている。また長距離型777は、いまの777-200LRでもシドニー〜ロンドン間の飛行が可能だが、向かい風が強いと途中で着陸し、燃料補給をしなければならない。したがってカンタスとしては、もっと余裕のある777長距離機を希望している。

 シンガポール航空は、矢張り長距離型の777双発機を10機考えている。これにはA340が競争相手だが、エアバス機の方は4発で燃料消費が大きい。燃料費の上がった現在では777が有利となった。とはいえ、シンガポール航空は現在A340-500をシンガポール〜ニューヨーク間の直行便に使っているので、ボーイングも油断はできない。

 787の注文は今の174機に加え、年末までにエア・インディアの20機、エア・カナダの14機、中国の36機が確定するであろう。これらは仮注文が公表されているものだが、ほかにもトルコ航空の20機、アエロフロートの15機が交渉中という。

 最近決まったのはエア・ニュージランドの2機で、同航空からの注文は4機になった。契約金額は不明だが、リスト・プライスは1億3千万ドルとされている。

 787に対抗するのはエアバスA350である。おそらくエミレーツ航空は11月のドゥバイ航空ショーで、その発注を決めると見られる。なおボーイング社はA350について、パリ航空ショーではリスト・プライスの半分程度、1機8,500万ドルの見積もりを出していたと暴露しているとか。

(西川 渉、2005.10.31)

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